コロナ禍によりバイク人気が高まっているという。芸能人がYouTubeでバイクをテーマにしたチャンネルを開設しているケースも散見される。筆者は大型自動二輪免許を保有しているが、これは神奈川県警察運転免許センター(以下、二俣川免許センター)で技能試験を受験して(所謂、一発試験)、取得した。
今回は、筆者の経験をもとに、二俣川免許センターでの大型二輪一発試験について話したいと思う。
(このサイトは、旅×デジタルをテーマとしたものであり、バイク免許取得は旅に関係はあるがデジタルにはさほど関係ないのでこの記事は外伝とでも位置付けておく)
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教習所より安く済ませられる可能性がある
免許センターの場合、1回の受験に掛かる費用は、4,050円である(試験手数料として2,600円、試験車使用料として1,450円)。合格した場合は別途交付手数料として2,050円が掛かる。つまり、n回目で合格したときに免許センターに支払う手数料は{4050 × n + 2050}円である。実際に10回までに合格したときの費用を以下に列挙してみる。
合格までの受験回数 | 免許センターに支払う手数料 |
---|---|
1回 | 6,100円 |
2回 | 10,150円 |
3回 | 14,200円 |
4回 | 18,250円 |
5回 | 22,300円 |
6回 | 26,350円 |
7回 | 30,400円 |
8回 | 34,450円 |
9回 | 38,500円 |
10回 | 42,550円 |
上記に加え取得時講習料として16,650円が掛かる。
筆者の場合、4回目で合格したので、免許センターに支払った手数料は合計で18,250円となった。
一方で、神奈川県内の指定自動車教習所で大型二輪MT免許を取得する費用を調べてみた。
指定自動車教習所 | 費用(税込) |
---|---|
自動車教習所A | 102,300円 |
自動車教習所B | 97,790円 |
自動車教習所C | 90,088円 |
9~10万円台が相場のようである。”安心オプション”のような技能教習延長に対する保険料や、卒業検定に落ちたときの再検定料は含まれない。
交通費や申請書に貼る写真の費用などの差も多少はあるだろうが、20回受けても一発試験の方が金銭面での負担は低いということになる。これが筆者が一発試験で免許取得を試みた動機の一つであった。
ベテランライダーじゃなくても合格できる
筆者の場合、普通二輪MT免許は教習所に通って取得したのだが、そこから2週間も経たずして大型二輪一発試験を申し込んだのでバイク歴としては非常に浅く、さらにはバイクを所有すらしていない状態だった。
「教習所に通わずに一発試験で」と聞くと、バイク歴が長かったり、走行に自信のある人が受けるものと想像するかもしれないが、結果はバイク歴の浅かった筆者が4回目で合格したので、あまり気にする必要はないのかもしれない。少なくとも、アクロバティックな走行が求められる試験ではない。
【2023年1月10日追記】普通二輪免許の試験・検定にはなく、大型二輪免許になって初めて登場する課題に「波状路」がある。この波状路の練習ができる環境を利用できる方であれば良いが、そのような状況にはない方の攻略方法は、YouTube上に投稿されている動画を見てイメージトレーニングをしておくということである(無論、誤った解説をしている動画がある可能性もあるが)。筆者はそれのみで乗り切ることができた。
合格率は何%か?
筆者が受験した4回における延べ受験者数は31名で(同じ人が複数回受験した場合は受験した回数分カウント)、その中で合格者は1名(筆者の4回目のみ)であった。つまり、これだけで見ると1回の受験での合格率は約3.2%ということになる。
ただし、筆者が受験した4回における延べ完走者数(完走者≠合格者)は3割にも満たなかったが、分布が各回でバラけており、受験者のうちの5割程度の人が完走できた回もあれば、誰も完走できなかった回もあった。このことからすると、別の回をサンプルに合格率を計算すると少し違ってくるかもしれない。
ひとまず1回の受験での合格率が3%と仮定した場合、n回目までで合格する率は、
100% – {n回すべてが不合格となる率}
である。1回の受験で不合格となる率は97%であるから、n回すべてが不合格となる率は97%^n(”^n”はn乗という意味)である。従って、 n回目までで合格する率は、
100% – 97%^n
である。実際に1回目から10回目までで合格する率を以下に列挙してみた。
受験回数 | 合格率 |
---|---|
1回 | 3% |
2回 | 6% |
3回 | 9% |
4回 | 11% |
5回 | 14% |
6回 | 17% |
7回 | 19% |
8回 | 22% |
9回 | 24% |
10回 | 26% |
さらに、20回目までで合格する率は46%であり、90%に達するのが74回であるが(100%になるのはnが無限大∞のとき)、実際には回を重ねるごとに受験者は習熟していき、1回の受験での合格率は一律ではなく上がるであろうからもう少し合格率のカーブは上向きではないかと考えられる。
因みに、警察庁が発表している運転免許統計によると、免許センターで技能試験を受験して大型二輪免許を取得した人は令和元年は全国で1,628人だったようである。
【2021年10月30日追記】ある自動車教習所関係者の話によると、まだ大型自動二輪免許が教習所で取れなかった(つまり、免許センターでの一発試験でしか取れなかった)時代だと、合格率は2%だったとのことである。現在は、上述の運転免許統計から合格率は全国平均で10%程度ではないかと考えられているので、そのころに比べると減点判断が緩くなっているのか、インターネットの普及で情報共有されている効果なのか。
試験は平日のみ
二輪の技能試験は平日のみである。都道府県の免許センターによっては曜日まで絞られている場合もある。
さらに、季節によるものかコロナ禍によるものかは定かではないが、二俣川免許センターの方によると筆者が受験した時期は受験者が多く、不合格になると次回の試験日は2週間程度先となった。筆者の場合、申し込み・事前審査から合格までの期間は2ヶ月弱を要した。
月曜から金曜が仕事で休みがなかなか取れない方には厳しいだろう。
コースは下見できる
二俣川免許センターの場合は二輪用のコースはコース内に入って下見をすることができる。8:00~9:00、12:00~13:00の時間に開放されている。二俣川免許センター内は写真・動画撮影が禁止されている領域があり、コース内も禁止領域なのでご注意を。
コース図からでは読み取れない標識・標示、停止線の位置、通行帯数、道路状況の情報を得たり、試験のシミュレーションをしたりするのが良いだろう。
技能試験の受付は8:30からであったため、受付を済ませたらすぐに二輪試験場へ向かい、徒歩でコース内を歩いて試験に備える受験者が多かった。
大型二輪のコース図 – どっちが楽?
二俣川免許センターの大型二輪の技能試験コースは2つあり、どちらになるかは試験当日の受付時に伝えられる。コース図は受付の近くにある掲示板に常時紙で貼り出されており、それを各自で見るか、写真を撮って覚える(受付の前に貼り出されているコース図は写真を撮っても良い)。申請日・事前審査日に写真を撮ってから帰るのが良いだろう。
【2021年7月3日追記】二俣川免許センターの場合、ホームページからでもコース図は入手できる。
> https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mes83128.htm
1号コースでは⑯から①を走行するとき、2号コースの場合は最初に①から⑯を走行するとき、指定速度として時速50kmを出す必要がある。
ウィンカーは左右のどちらをいつ出すのか、ギアは何速にするのかの指定、説明はない。受験者で判断しなければならない。
上記のコース図を見比べて直感的に2号コースの方が複雑なように見えたので、少し調べてみた。
調査項目 | 1号コース | 2号コース |
---|---|---|
右折の回数 | 8回 | 11回 |
左折の回数 | 15回 | 14回 |
信号機のある交差点を通過する回数 | 2回 | 4回 |
一時停止回数(含:踏切、一本橋手前) | 7回 | 7回 |
障害物の側方通過回数 | 2回 | 1回 |
目印(二重丸の数字)の通過回数 | 37回 | 40回 |
障害物の側方を通過する回数は1号コースの方が1回多いものの、右左折の合計回数、信号機のある交差点を通過する回数、目印の通過回数はどれも2号コースの方が多い。右左折の回数が多いということは右左折の方法に関する減点の機会が多いということとコースが複雑であるということであり、信号機のある交差点を通過する回数が多いということは、安全確認や発進・停止に関する減点の機会が多いということであり、目印(コース図の二重丸の数字)の通過回数が多いということは走行距離が長い可能性がありそれだけ減点の機会が多い可能性があるということである。やはり、2号コースの方が少し難しいのかもしれない。
試験がどちらのコースになるのか、その規則性(1日ごとの入れ替わり、曜日など)を見出すことはできなかった。
試験車はホンダNC750L(教習車仕様)
一発試験の場合、試験で初めて大型車に乗るという方も多いとは思うが、以下のスペックを見ても分かる通り、臆することはない。試験車として使用されるNC750L(教習車仕様)は一般に出回っている大型車に比べると馬力、トルクが抑えられており、中型車並みである。
NC750L (教習車仕様) | CB400 SUPER FOUR (教習車仕様) | CB400 SUPER FOUR | |
---|---|---|---|
車両重量 | 228kg | 207kg | 201kg |
シート高 | 770mm | 750mm | 755mm |
最高出力 | 37馬力/5,250rpm | 38馬力/4,500rpm | 56馬力/11,000rpm |
最大トルク | 54N・m/4,000rpm | 32N・m/4,500rpm | 39N・m/9,500rpm |
上の写真のとおり、教習車仕様ならではのランプが付いており、現在のギアやブレーキを掛けた状態などを教習指導員や試験官が確認できるようになっている。これを技能試験の受験者が見てはいけないというルールはないのだが、乗車位置からは上二つぐらいしか見えないので、受験者はこのランプには頼れない。
一発試験での免許取得の流れ
二俣川免許センターでの一発試験による免許取得の流れは以下であった。
- 申請 ・・・ 申請書の記入、2,600円分の収入印紙購入、視力検査を実施。受付は13:00~13:30。
- 事前審査 ・・・ 車両の引き起こし、8の字の押し歩き。1.と同日の15時ごろから二輪試験場にて実施。
- 技能試験 ・・・ 受付は8:30~9:00。2.とは別の日に実施し、収入印紙は1,450円分を購入する。2回目以降は4,050円分の収入印紙を購入し、合格するまで3.を繰り返す。受付順が技能試験順のようである。試験は9時過ぎから。受験者全員の試験が終わったら合否の発表と各受験者の講評が個別にある(おおよそ11時半ごろ)。
- 取得時講習 ・・・ 普通二輪免許を取得済みの場合は免除される
- 免許証交付 ・・・ 取得時講習免除者は技能試験当日に交付される。2,050円分の収入印紙購入、写真撮影、免許証受け取り。写真撮影は12:30から。
技能試験ではヘルメットとグローブを持参する必要がある(事前審査では不要)。プロテクターは貸出がある。肘、膝、胸、背中が防護出来ていれば持参のものでも良い。借りている人が多かった。ヘルメットにカメラやインカムを装着している場合は外しておく必要がある。技能試験時に電源を切っておくだけでは不可である。
次に、技能試験について、もう少し説明したいと思う。
技能試験の流れ
試験の前にならし走行というこもがある。前出のコース図で説明すると、試験車発着所を出発し、①を右折し、⑯へ向かって走行して手前で右折して発着所に戻ってエンジンを切って下車する、という時間にして1分程度のものである。このならし走行は採点には含まれない。初めて受験する方はここでNC750Lがどういう車両なのかを掴む機会となる。ならし走行は試験官から合図があってから始める。
前の受験者の試験が終わったら、次の受験者のならし走行となる。つまり、
受験者Aのならし走行→受験者Aの試験→受験者Bのならし走行→受験者Bの試験→・・・
という流れである。ただし、受験者が多い場合は2台の車両を使って試験は実施される。このときは、前の受験者の試験が開始されたら、次の受験者のならし走行が始まる。前の受験者の試験中に次の受験者がならし走行を終えておくということである。
ならし走行が終ると、少ししてからインターホンで合図がある。名前、生年月日を聞かれるので答えると試験開始の合図がされる。
試験中は同じ二輪試験場で普通二輪や小型限定の試験車も走行しているので、公道と同じく交差点や右左折時には優先車判断が求められる。
走行中に試験官から合図をする場合は車両にスピーカーが付いており、それで伝えられる。減点超過で試験中止や、他の試験車との都合で停止してもらう場合、コースを間違えている場合などである。
試験終了後の試験官からの講評
合否が伝えられるのは勿論だが、不合格だった場合はどこがダメだったかの説明が受験者個別にある。例えば、スラロームは何秒台だったとか、安全確認ができていなかった、といった減点となったポイントである。合格だった場合は点数が分かる。
試験で引っかかるポイントは大体どの受験者も同じようであった(他の受験者の講評も聞こえる)。
メリハリのある運転・・・これは試験の前に毎回試験官から言われることである。コース図の①-③、⑭-⑯のような外周ではスピードを出さないといけない。時速30キロ台では減点されるようであった。
安全確認・・・交差点通過時の左右確認、発着時、進路変更時の巻き込み確認はミラーだけでなく、直接目で確認する必要があり、かつ、大きく首を振ることによって、安全確認していることを試験官が認識できるようにしなければならない。1回でも実施しないと減点となる。
大回りにならないように・・・右左折時に大回りにならないように注意する。これも減点適用事項である。
課題のタイムは意外と重要・・・スラローム(7秒以内)、一本橋(10秒以上)、波状路(5秒以上)のそれぞれにおいて、試験中止事項を犯さないことは勿論であるが、規定時間のクリアを目指すことも重要である。例えば、一本橋を7秒台でかけ抜けてしまうと15点減点であり、スラロームで7秒台だと5点減点、波状路で4秒台だと5点減点なので、これだけで残り5点しか猶予がなくなる(70点以上が合格)。
減点適用項目と減点数一覧
警察庁が警視庁交通部および各道府県警察本部に通達した資料が以下にある。この資料に運転免許技能試験の減点適用事項と減点数が定義されており、各都道府県の免許センターはこれを基準に採点を行っているものと思われる。
> https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/menkyo/menkyo20190919_r089.pdf
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二俣川免許センター固有の情報は、筆者受験当時から変更になっている可能性があります。最新の情報は二俣川免許センターへご確認ください。