今回は、原付2種のスクーターに激安グリップヒーターを取り付けた体験記事である。
各見出しへのリンク
用意したもの
グリップヒーター
Amazonで2千円程度で販売されていたもの。巻き付けタイプではなく、グリップを取り換えるものである。また、電源はUSBではなく、バイクの車両から12Vで供給するタイプである。後述の事情により、メーカー、製品名は伏せさせていただく。
ギボシ端子
グリップヒーターの+/-端子を電源側に接続するためのものである。今回はデイトナ社のD-UNIT WRに接続する作例で、CA/CB103型のギボシ端子を用意した。
パーツクリーナー
ハンドル左側のグリップを外すときに使う。逆さ噴射が可能なものを選ぶ。
工具類としては以下が必要である。
- ドライバー⊕1
- ドライバー⊕2
- マイナスドライバー(先端が小さめのもの)
- スパナ14mm(2個)
- カッター
- 鉄ヤスリ
- 紙ヤスリ
- 電工ペンチ
費用
激安グリップヒーターがAmazon価格で2千円程度といったところである。ギボシ端子とパーツクリーナーはそれぞれ数百円である。
大手バイク店で取り付けを行ってもらうと工賃として1万円程度はするようである。また、持ち込みだと工賃が倍になったり、持ち込みであっても受け付けてもらえる製品が限定されていたりする。おそらく、今回のような製品を職人芸のように加工しないといけないものは断られると思われる。
取り付け車両
第二種原動機付自転車 ・・・ SUZUKI アドレスV125S 型式CF4MA
配線図
今回はデイトナ社D-UNIT WRを取り付けてある車両に対して、追加でグリップヒーターを取り付ける。このため、配線図はD-UNIT WR込みになっている。
注意点としては、D-UNIT WRの端子は最大7.5Aの方に接続することである。グリップヒーターという特性上電流量が大きいので、最大5.0Aの方ではPTCサーミスタ(ヒューズのような役割の機構)が働いてグリープヒーターへの通電が遮断されてしまうようである(筆者経験済み)。
アクセサリー電源の引き込み方法は、車種は違うものの、以下の記事で紹介している方法と同じである。
取り付け手順
ミラー、カバー類を外す
外すカバーはハンドルカバーとフロントカバーであるが、ハンドルカバーを外すには、ミラーを外す必要がある。
グリップヒーターの動作チェックをする
今回はD-UNITにグリップヒーターを接続する作例なので、この段階でグリップヒーターとD-UNITを接続し、イグニッションをONにしてグリップヒーターの動作確認を行う。グリップヒーターが動作しなければ、グリップヒーター自体に問題があるか、配線に問題があるということになるので、以降の作業をする前にそれらを解決する必要がある。
D-UNITを使用しない場合はバッテリーの+端子、-端子にグリップヒーターの+端子、-端子をそれぞれ直接接続し、グリップヒーターが温まるかを確認する。
グリップヒーターが正常に動作せず、返品する可能性があることを考慮して、できればこの段階ではグリップヒーターの端子は加工せずに動作確認をしたいところである。
グリップヒーターの端子を加工する
グリップヒーターの動作確認が終わったら、接続先電源の端子に合わせてグリップヒーター側の端子を電工ペンチを使って加工する。今回はデイトナ社D-UNIT WRの端子に接続するのでグリップヒーター側の端子をCA/CB103のギボシ端子に加工する。
ハンドル右側のスロットルカバーを外す
2つのネジで留まっているので、それらを外す。
スロットルカバーが外れれば、付いているグリップはスロットルコーンごと簡単に抜ける。
グリップヒーターのスロットルコーンを加工する
今回のメインイベントである。
スロットルカバーおよびハンドルにはめ込んだときにスムーズにスロットルが回るようにグリップヒーター側の右のスロットルコーンを加工する。具体的には、スロットルカバーに収まる部分をカッター、鉄ヤスリ、紙ヤスリで削る。どのあたりを削るかは下の写真を参照のこと。今回取り付けるグリップヒーターの場合は1mm以上は削ることとなった。
エンジンを掛けて動作チェックをする
グリップヒーターの右側グリップをハンドルにはめ込み、スロットルケーブルの先端をグリップにはめ込み、スロットルカバーを取り付け、エンジンを掛けて、アクセルの開閉を確かめる。スムーズに回らない、回したら戻らない、などないか充分に確認する。
もし、どうしてもうまくいかない場合は、この段階でこの製品の取り付けを諦めて、既存のグリップをもとに戻す。
ハンドル左側の既存グリップを外す
右側のグリップがうまくいったら、左側のグリップの取り換えに移る。左側ハンドルグリップの隙間にマイナスドライバーを差し込み、その隙間にパーツクリーナーを吹きかけながら、ドライバーを奥へ、また、横へと動かし、既存のハンドルグリップを剝がすようにして抜く。
ハンドル左側にグリップヒーターのグリップを差し込む
グリップヒーターの左側グリップを左ハンドルに差し込んでいく。ねじりながら押し進めていく。ホットグリップ用の接着剤を使ったほうが良いだろうが、今回のグリップヒーターの場合、かなり固かったので、使わなくてもグリップが回ってしまったりはしないと思われた(普通に握っている分には回らない)。ハンドルカバーとの隙間が約1~2mm程度になるまで差し込む。
カバー類、ミラーを元に戻す
ハンドルカバー、フロントカバー、ミラーを元通りに取り付ける。ミラーを取り付ける際に14mmスパナを2つ使うことになる。
グリップヒーターの左側のケーブルは、ブレーキレバーの隙間から出るようにしておけばよいだろう。左側のグリップは回すわけではないので、あそびはそれほどなくてもよい。このグリップヒーターの説明書によると、地面までの垂線から15度の角度でグリップからケーブルが出るのがグリップの正しい向きのようだが、それほど気にする必要はないだろう。
グリップヒーターの右側のケーブルは、スロットルケーブルと同じ穴に通せば良いだろう。スロットルは回すので、グリップヒーター用ケーブルには多少のたるみを持たせておいたほうが良い。
バイクの動作を確認する
重要なのはグリップヒーターの動作確認よりもこの確認である。もともとのバイクの機能が動作しなくなってしまったら問題である。
ハンドルを左右に切ってみる。ハンドルを切ってみて、突っ張る感じがあれば、配線をいじったことでハンドルが切れなくなっている可能性がある。
また、電装系を追加したので、灯火類の点灯、点滅も確認しておく。路地裏を1周、走行もしてみた方が良い。
灯火類が正しく灯火しなければ交通違反であり、かつ、安全上問題が生じるので必ずこの確認は行いたい。
アクセル操作も念押しでもう一度確認する。
バッテリー上がりはしないか?
今回の取り付け車両で、ドライブレコーター、無線充電ホルダー、そして今回のグリップヒーターを同時に使用して1日走行したが、バッテリー上がりとなる兆候は見られなかった。
ただし、前述のようにD-UNITの最大5.0Aの端子で使用したらPTCサーミスタによって遮断されてしまったようなので、消費電力が大きいことは確かである。今回の製品は公称では15-35Wとされている。
原付1種(50cc)のような発電した電気の一部を交流電流(AC)として使っている車両ではこのグリップヒーターと他の電装系を同時使用したらバッテリー上がりを起こす可能性があるだろう。
評価
温かさ
今回のグリップヒーターは2段階で温度調節ができるのだが、1段階目ですら、素手では長時間握ってられないほどかなり熱くなった。グリップヒーターとしての機能性は充分発揮するようであった。USBタイプのグリップヒーターも使用したことがあるが、やはり5Vだからか、バッテリーからの12Vよりは熱くはならないようである。
操作感
筆者は巻き付けタイプも使用したことはあるが、巻き付けタイプはグリップを握ると、何かを挟んで握っている感じが拭えず、気になってしまう。その点、グリップ交換式はそのような違和感はない。
メモリー機能
今回のグリップヒーターの温度調整はレバーによるハードスイッチなので、そのレバーを動かさない限り、車両の電源を入れたときに必然的に前回の温度設定を記憶していることになる。
スロットルコーン付きのグリップヒーターのリスク
スロットルコーン付きのグリップヒーターは取り付けにリスクがある。もともと付けていた右側のグリップをスロットルコーンから外す必要がないというメリットもあるが、スロットルコーン付きのグリップヒーターは取り付ける車種のスロットルカバーと合わない可能性があり、適合する車種情報が販売事業者から公開されていれば良いが、そのような情報がない場合(今回取り付けたのグリップヒーターは適合車種の情報はなし)は、最悪、取り付けられず、無駄な買い物となる。
品質
使用して2週間ほどで全く機能しなくなった。バイクのカバー類を開けて確認したところ、グリップヒーターの配線途中にある部品が溶けていた。
使用方法を誤っていた可能性もあるが、安物買いの銭失いであった気もする。火事にならずに済んでよかった。
総評
結局のところ、ある程度名の知れている以下のような、スロットルコーンなしの12Vのグリップ交換式のメモリー機能のある製品を使用するのがよい気がする。