125ccの自動二輪車に無線充電が行えるスマホホルダーを取り付けてみた。配線を切断したり、カバーに穴をあけたりといった、車両の既存のパーツを改造することがない方法を今回は紹介する。
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用意したもの
KAEDEAR社クイックホールド 手裏剣 QI USB KDR-M22A
キタコ社ACC分岐ハーネス(品番:756-9000300)
ギボシ端子(CA/CB103型)
工具類は、
- ドライバー
- スパナ 14mm (2個)
- 電工ペンチ
- ビニールテープ
- ハサミ (ビニールテープを切るため)
- 電圧テスター
である。
ACC分岐ハーネスは以下のキジマ社のものでもよいが、ギボシ端子のサイズはCA/CB103型ではないので注意が必要。
費用
購入した上記3点のパーツの合計は7千円ほどであり、掛かるのはそれだけである。
取り付け車両
第二種原動機付自転車 ・・・ SUZUKI アドレスV125S 型式CF4MA
配線図
取り付け後の配線を以下の図で示す。
リアのブレーキスイッチの配線からアクセサリー電源プラス(ACC+)を分岐させ、スマホホルダーの電源とする。今回の取り付け車両はリアとフロントとでブレーキスイッチの端子の形状が異なり、フロント側から電源を取ろうとすると工作が必要となるため(大変な作業ではない)、組み立てるだけで済むリア側から電源を取ることとした。
取り付け手順
今回は、増設する配線類はすべてハンドルカバー内に収める作例である。外すカバーは、ハンドルのフロントカバーとバッテリーのカバーである。
組み立て工程の中間で4回の電気系統の動作確認があるが(最終確認を含めると合計5回)、これは、うまく通電していないときの原因を特定するための近道である。すべてを組み立て終わってから最後に1回だけしかやらないとすると、通電出来ていなかったときに原因を特定するために工程を遡っていかなければならず(カバーを外したり、配線を外したり)、手間が掛る。
バッテリーのカバーを開け、マイナス端子を外す
電装系に触る前に、車両のバッテリーのマイナス端子を外しておく。六角レンチでバッテリーのカバーのネジ2個を外し、カバーを開ける。その後、バッテリーのマイナス端子をドライバーで緩めて接続されている端子を外す。
これは作業中にバッテリーのプラスに繋がっている配線の端子を誤ってボディフレームなどのマイナスに触れさせてしまった場合によるショートを防止するためである。
スマホホルダーをバッテリーに繋いで動作確認する
KAEDEAR社のスマホホルダーのプラス線をバッテリーのプラス端子へ、マイナス線をバッテリーのマイナス端子に接触させ(所謂、「バッ直」の状態)、スマホホルダーが通電するかを確認する。動作確認は、スマホをスマホホルダーにセットして充電されるかを見れば良いだろう。ここで、通電しなかったら、スマホホルダー側の初期不良の可能性がある。
ミラー、ハンドルフロントカバーを外す
今回の取り付け車両の場合、ハンドルのフロントカバーを外すには、その前にミラーを外す必要がある。ミラーがフロントカバーの穴を通っているからだ。ミラーを外すには14mmのスパナを使用する。
ミラーを外したら、ハンドルのカバーの前1ヶ所、後ろ2ヶ所のネジをドライバーで外す。
ネジを外せば、カバーは前側に外せる。
フロントカバーはヘッドライトの配線で繋がった状態になっている。作業がしやすいように、ヘッドライトのカプラーを外し、フロントカバーを完全に取り外してしまっても良い。
リアのブレーキスイッチにACC分岐ハーネスを取り付ける
リアのブレーキスイッチのカプラーは配線類と一緒に押し込められているので、探し出して前に出す。ハンドルカバー内には複数の形状のカプラーがあるが、前述のキタコ社のACC分岐ハーネスと同じ形状のカプラーを見つけ出す。
探し出したらカプラーを外し、そこにキタコ社のACC分岐ハーネスのカプラーを差し込む。
カプラーを繋いだら、一旦バッテリーのマイナス端子を繋ぎ、キタコ社のACC分岐ハーネスのACC+配線のギボシ端子に電流が流れているかを電圧テスターを使って確認する。電圧テスターのプラス側をACC+に、マイナス側をバッテリーのマイナス端子に触れさせて確認する。バイクのメインキーをONにしたときに電圧が12Vになっていれば良い。確認できたらバッテリーのマイナス端子をまた外しておく。電圧テスターは以下のような安いもので良い。
スマホホルダーのプラス端子をギボシ端子に加工する
今回のKAEDEAR社のスマホホルダーの端子はプラスもマイナスも初期段階ではクワ型となっている。一方で、キタコ社のACC分岐ハーネスの分岐したプラス端子はギボシ端子になっているので、スマホホルダー側のプラス端子をギボシ端子に加工する。スマホホルダーのマイナス端子については後述するようにネジに共締めするので、そのままでよい。
分岐したACCにスマホホルダーのプラス端子を差し込む
加工したスマホホルダー側のギボシ端子とACC分岐ハーネスのプラス端子を差し込む。その後、防水、ショート防止のためにビニールテープでグルグル巻きにする。
スマホホルダーのマイナス端子をフレームに取り付ける
スマホホルダーのマイナス端子をアースに取り付ける。ハンドル近辺だと、左右の2ヶ所にネジで共締めできるところがあるのでどちらかのネジを緩めて取り付ける。
ただし、この場所でアースが取れているかを電圧テスターで確認する。外していたバッテリーのマイナス端子を一旦取り付ける。電圧テスターのプラス側をバッテリーのプラス端子へ、マイナス側をアースを取る場所に触れさせてみる。電圧が低い場合はヤスリで塗装を削ると改善される場合がある。また、ハンドルを左右に切る動作を行うと電圧が不安定となる場合(※)は他のところからアースを取ることになる。ボディフレームだとハンドルのカバー内では接続できず、他のカバーも開ける必要がある。バッテリーまで延長してバッテリーのマイナス端子に接続する場合は配線を延長させないと届かないので、別途配線コードを用意し、延長のための工作を行うことになる(大変な作業ではない)。他の電装部品を追加する予定があるならば、デイトナ社のD-UNITのようなアクセサリー電源ユニットを介して接続しても良いだろう。
※ボディフレーム(バッテリーのマイナス端子が接続されている)とはベアリングで接触しているため、通電したりしなかったりといった現象が起こることがある。
バッテリーのマイナス端子を取り付ける
外していたバッテリーのマイナス端子を元に戻す(前工程の電圧確認で問題無ければ既に付けた状態ではあるが)。メインキーをONにし、スマホホルダーでスマホの充電などで通電テストを行い、動作しているようであればバッテリーのカバーを閉める。
ハンドルフロントカバー、ミラーを取り付ける
スマホホルダーおよびACC分岐ハーネスの配線類を押し込め、フロントカバー、ミラーの順で元通りになるように取り付ける。
スマホホルダーの配線(SAE端子)はミラーの穴から出してもよいが、今回はブレーキレバーカバーの前側の隙間から出した(下の写真)。
ミラーの向き調整でスパナを二つ使うことになる。
スマホホルダーをクランプバーに取り付ける
クランプバーにスマホホルダーを取りけつける。
今回のスマホホルダーはΦ12/22/25.4(Φは直径の意味、Φ22とは直径22mmのこと)のパイプに取り付けることができる。スマホホルダー付属のクランプバーを使用してもよいし、以下のようなクランプバーを別途用意してもよい。
スマホを装着して通電確認する
すべてを組み立てた後、スマホホルダーが通電するかの最終確認を行う。スマホをスマホホルダーにセットし、バイクのキーを回してONにして(このときはエンジンを掛けなくても良い)、スマホが無線充電できているかを確認する。
バイクの動作を確認する
重要なのはこの工程である。もともとのバイクの機能が動作しなくなってしまったら問題である。
ハンドルを左右に切ってみる。今回はハンドルカバー内で増設した配線が閉じているが(アースをボディフレームやバッテリーから取る場合を除く)、ハンドルを切ってみて、突っ張る感じがあれば、配線をいじったことでハンドルが切れなくなっている可能性がある。
また、ブレーキスイッチから電源を取ったので、ブレーキランプが点灯するかも確認する。さらには、全般的に、灯火類の点灯、点滅も確認しておく。路地裏を1周走行してみた方が良い。
灯火類が正しく動作しなければ交通違反であり、かつ、安全上問題が生じるので必ずこの確認は行いたい。
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無線充電の最大のメリットは雨の日ですね。晴れていれば、モバイルバッテリー+USBケーブルで充電することで丸1日のツーリングに対応できますが、雨だとスマホのUSBの差込口から雨水が侵入して充電がとまってしまいますから(iPhoneでもAndroidでも)。