検証日:2020年7月下旬
検証結果:インターネットの速度は下りは1~2Mbps、上りは0.5Mbps程度だった。Wi-Fiスポットとの接続に認証はなく、通信も暗号化はされていない。
今回は、日本航空(JAL)の国内線の機内Wi-Fiについて、速度やセキュリティ面の現状を確認してみた。
過去の記事でANA国内線の機内Wi-Fi・セキュリティについて確認した記事を投稿したが、そのJAL版である。
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JALの機内Wi-Fiの速度
飛行中の機内で実測してみた。
JALのインターネット回線速度の実測値
機内Wi-Fiを使用して地上のサーバとの通信速度を測定してみた。ここでは、Googleが提供している「インターネット速度テスト」を使用し、40回測定を行った。
通信方向 | インターネット回線速度 (40回の平均値) |
ダウンロード | 1.46 Mbps |
アップロード | 0.55 Mbps |
測定値の分布は以下の通りで、数十Mbpsといった速度は1度も出ておらず、分散は小さい。
測定環境は以下である。
<<測定環境1>>
機種:B767-300
路線:羽田(HND)発沖縄(OKA)行き
測定地点:紀伊半島の約50km南方、四国の約100km南方 10回測定、沖縄本島の約50km東 各10回測定
搭乗客は座席数に対して3~4割程度
<<測定環境2>>
機種:B737-800
路線:沖縄(OKA)発羽田(HND)行き
測定地点:伊豆半島の約30km南方 10回測定
搭乗客は座席数に対して3~4割程度
両環境とも機内Wi-FiのシステムはGogo社によるものある。
Wi-Fi単独の速度は?
接続している端末(ここではノートPC)から航空機内にあるデフォルトゲートウェイまでの通信速度を確認してみた(デフォルトゲートウェイのIPアドレスは機内Wi-Fiに接続すれば確認することができる)。
しかし、以前のANAのときと同様の方法である、Windowsのコマンド プロンプトからデフォルトゲートウェイに対してpingコマンドを打って測定しようとしたが、pingの応答が返されず、測定できなかった。
JALが対応しているWi-Fi速度の規約は?
JALが対応しているWi-Fi速度の規約(プロトコル)は公式には非公開となっている。
とは言っても、各プロトコルで実際に接続を試みれば、対応状況を確認することはできる。筆者が実際に接続確認した結果を以下の表で示す。
規約 | 周波数帯 | 最大通信速度 | JAL機での接続可否 |
IEEE802.11b | 2.4GHz | 11 Mbps | 〇 |
IEEE802.11g | 2.4GHz | 54 Mbps | 〇 |
IEEE802.11a | 5GHz | 54 Mbps | 〇 |
IEEE802.11n | 2.4GHz | 600 Mbps | 〇 |
5GHz | 600 Mbps | 〇 | |
IEEE802.11ac | 5GHz | 6.9 Gbps | 〇 |
IEEE802.11ad | 60GHz | 6.8 Gbps | ? |
IEEE802.11ax | 2.4GHz | 9.6 Gbps | × |
5GHz | 9.6 Gbps | × |
検証した機種はB767-300とB737-800である
以前のANA便での検証ではIEEE802.11acに非対応のようであったが、JALでは接続できた。インターネットに接続する必要のないビデオプログラム、フライトマップを利用する分には快適な動作となるのかもしれない。
なお、スマホアプリを使って機内のWi-Fi電波を確認してみたところ、筆者の座席からは5個のチャンネルが検出された。SSIDはすべて同じである。
JALの機内Wi-Fiのセキュリティ
結論を先に述べると、ANAと同じく、セキュリティは街中のフリーWi-Fiスポットと同じ状態である。認証、暗号については機内Wi-Fiに接続後にスマホのWi-Fi接続設定画面やWindowsのコマンド プロンプトから確認できる(上図)。
機内Wi-Fiに接続するための認証はない
機内のWi-Fiアクセスポイントとの接続に認証はない。
家庭で使用するWi-Fiルーターでは、WPA2やWPA3といった認証方式で認証された端末のみがWi-Fiに接続できるように運用している場合が多いかと思われるが、機内Wi-Fiはそのような認証はなく、電波が拾えれば誰でも接続できる。
ただし、機内Wi-Fiの電波を拾える場所は機内か連絡橋(PBB)などの機体から近い場所であるため、接続できる人はその航空機に搭乗する乗客および乗務員や地上係員などの航空関係者に限られる。従って、認証は不要とも考えられる。
なお、機内Wi-Fiを通してインターネットサービスを利用する場合は、メールアドレスの登録する操作が必要になる。
機内Wi-Fiの通信は暗号化されていない
接続に認証がないので、通信も暗号化されていない。
JALのホームページによると、通常のアクセスポイント同様のセキュリティ対策をしているとあるのだが、暗号化されていない状態が果たして通常のアクセスポイントと言えるのか…
セキュリティについて教えてください。
引用:JAL公式ホームページ「よくあるご質問(国内線 機内Wi-Fi)」
通常のアクセスポイント同様のセキュリティ対策をしておりますが、お客さまがご利用になる端末でのファイアウォール、ウイルス対策ソフトの導入をお勧めします。
将来的には認証なしでも通信が暗号化される「Wi-Fi CERTIFIED Enhanced Open」仕様へ対応されるとありがたいが、現状はインターネットを利用する際はVPNを利用するのがよいだろう。
JAL国内線の機内インターネットサービスの仕組み
一般的に、航空機の機内インターネットサービスの仕組みは以下の2種類がある。
- 機内では端末はWi-Fiで接続し、機体は衛星と通信し、衛星と地上のサーバが通信する
- 機内では端末はWi-Fiで接続し、機体は地上にある複数の接続ポイントを移動とともに切り替えながら通信する
JALの国内線は前者の仕組みを採用しており、機体によってパナソニックアビオニクスかGogoのどちらかのシステムで提供されている。
今回の検証ではGogoのシステムであった。
機内ではプライベートアドレスが割り当てられる
JALの機内Wi-Fiに接続した端末にはプライベートのIPアドレスが割り当てられる。
なお、機内Wi-Fiで接続されている他の端末に対してpingは応答しないようになっているようであった。筆者はスマホとノートPCの2台を機内Wi-Fiに接続している状態で、スマホに割り当てられたIPアドレスを確認し、ノートPCからスマホに対してpingを打ってみたが、応答は返されなかった。
JAL国内線の機内Wi-Fiの料金は無料
JALでは本記事投稿時点では、日本の国内線の機内Wi-Fi、および、インターネットサービスは無料で利用できる。