ANA国内線の機内Wi-Fiの速度・セキュリティを確認してみた

投稿日:2020年8月8日
更新日:

検証日:2020年7月下旬

検証結果:インターネットの速度は上りも下りも数Mbps程度だった。Wi-Fiスポットとの接続に認証はなく、通信も暗号化はされていない。

今回は、全日空(ANA)の国内線の機内Wi-Fiについて、速度やセキュリティ面の現状を確認してみた。

ANA Wi-Fi Serviceのステッカー

ANAの機内Wi-Fiの速度

飛行中の機内で実測してみた。

ANAのインターネット回線速度の実測値

機内Wi-Fiを使用して地上のサーバとの通信速度を測定してみた。ここでは、Googleが提供している「インターネット速度テスト」を使用し、40回測定を行った。

通信方向インターネット回線速度
(40回の平均値)
ダウンロード3.19 Mbps
アップロード1.19 Mbps

測定値の分布は以下の通りで、数十Mbpsといった速度は1度も出ておらず、分散は小さい。

ANAの機内インターネットサービスの速度測定結果の分布
40回測定したときの速度の分布

測定環境は以下である。

<<測定環境1>>
機種:エアバスA321neo
路線:羽田(HND)発沖縄(OKA)行き
測定地点:四国の約100km南方 10回測定
搭乗客は座席数に対して8~9割程度

<<測定環境2>>
機種:B787-900
路線:沖縄(OKA)発羽田(HND)行き
測定地点:沖縄本島の約50km西、紀伊半島の約100km南方、伊豆半島の約50km南方 各10回測定
搭乗客は座席数に対して2~3割程度

【2023年4月21日追記】2023年4月中旬にインターネット速度を測定しみたところ、本記事投稿時点での前述の結果と大差はなかった。それよりも、そもそもインターネットに接続できない場合がときどきあったことの方が気になった。

Wi-Fi単独の速度は?

接続している端末(ここではノートPC)から航空機内にあるデフォルトゲートウェイまでの通信速度を確認してみた(デフォルトゲートウェイのIPアドレスは機内Wi-Fiに接続すれば確認することができる)。

ANAの機内Wi-Fiスピード

Windowsのコマンド プロンプトからpingコマンドで速度測定してみた結果は、11~15Mbps程度でありWi-Fi単独の速度も決して速くはなかった。なお、接続していた通信規約はIEEE802.11n(最大通信速度 600Mbps)である。

インターネット回線速度はWi-Fiの速度だけでなく、最終的に地上にあるサーバまでの通信速度であるため、Wi-Fi以外の要因も影響する。機内エンターテイメント(航空機に用意されている動画やフライトマップなど)だけを楽しむ分にはインターネットの通信は不要となる。

ANAが対応しているWi-Fi速度の規約は?

ANAが対応しているWi-Fi速度の規約(プロトコル)は公式には非公開となっている。
(ANA国内線機内インターネットサービスを提供しているパナソニックアビオニクスへの確認より)

とは言っても、各プロトコルで実際に接続を試みれば、対応状況を確認することはできる。筆者が実際に接続確認した結果を以下の表で示す。

規約周波数帯最大通信速度ANA機での接続可否
IEEE802.11b2.4GHz11 Mbps×
IEEE802.11g2.4GHz54 Mbps
IEEE802.11a5GHz54 Mbps
IEEE802.11n2.4GHz600 Mbps×
5GHz600 Mbps
IEEE802.11ac5GHz6.9 Gbps×
IEEE802.11ad60GHz6.8 Gbps
IEEE802.11ax2.4GHz9.6 Gbps×
5GHz9.6 Gbps×
〇:接続できた ×:接続できなかった ?:未確認
検証した機種はB787-900である

なお、スマホアプリを使って機内のWi-Fi電波を確認してみたところ、筆者の座席からは10~12個のチャンネルが検出された。SSIDはすべて同じである。以下は5GHzのチャンネルの電波の強度である。

ANAの機内Wi-Fiの電波
出典:farproc アプリ「Wifi Analyzer」

【2022年6月12日追記】2021年12月より国内線に投入されたGE製エンジンを搭載したB787-900(78G)で試したところ、IEEE802.11acでのWi-Fi接続はできた。

ANAの機内Wi-Fiのセキュリティ

ANAの機内Wi-Fiの認証、暗号の状態

結論を先に述べると、セキュリティは街中のフリーWi-Fiスポットと同じ状態である。認証、暗号については機内Wi-Fiに接続後にスマホのWi-Fi接続設定画面やWindowsのコマンド プロンプトから確認できる(上図)。

機内Wi-Fiに接続するための認証はない

機内のWi-Fiアクセスポイントとの接続に認証はない。

家庭で使用するWi-Fiルーターでは、WPA2やWPA3といった認証方式で認証された端末のみがWi-Fiに接続できるように運用している場合が多いかと思われるが、機内Wi-Fiはそのような認証はなく、電波が拾えれば誰でも接続できる。

ただし、機内Wi-Fiの電波を拾える場所は機内か連絡橋(PBB)などの機体から近い場所であるため、接続できる人はその航空機に搭乗する乗客および乗務員や地上係員などの航空関係者に限られる。従って、認証は不要とも考えられる。

なお、機内Wi-Fiを通してインターネットサービスを利用する場合は、メールアドレスの登録と利用規約へ同意する操作が必要になる。

機内Wi-Fiの通信は暗号化されていない

接続に認証がないので、通信も暗号化されていない。

将来的には認証なしでも通信が暗号化される「Wi-Fi CERTIFIED Enhanced Open」仕様へ対応されるとありがたいが、現状はインターネットを利用する際はVPNを利用するのがよいだろう。

ANA国内線の機内インターネットサービスの仕組み

一般的に、航空機の機内インターネットサービスの仕組みは以下の2種類がある。

  • 機内では端末はWi-Fiで接続し、機体は衛星と通信し、衛星と地上のサーバが通信する
  • 機内では端末はWi-Fiで接続し、機体は地上にある複数の接続ポイントを移動とともに切り替えながら通信する

ANAの国内線は前者の仕組みを採用しており、パナソニックアビオニクスにてシステムが提供されている。後者は米国のような土地が広い国を飛行する航空会社で採用されている。

機内ではプライベートアドレスが割り当てられる

ANAの機内Wi-Fiに接続した端末にはプライベートのIPアドレスが割り当てられる。

なお、機内Wi-Fiで接続されている他の端末に対してpingは応答しないようになっているようであった。筆者はスマホとノートPCの2台を機内Wi-Fiに接続している状態で、スマホに割り当てられたIPアドレスを確認し、ノートPCからスマホに対してpingを打ってみたが、応答は返されなかった。

ANA国内線の機内Wi-Fiの料金は無料

ANAでは本記事投稿時点では、日本の国内線の機内Wi-Fi、および、インターネットサービスは無料で利用できる。

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旅好きが旅にまつわるデジタルライフをゆるめにお届けする場所です。執筆者はひと月に最低1度は海外に出掛け、現地の路地裏をウロチョロしています。

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